- 「脱毛症」って何ですか?
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「脱毛症」は、毛の数が少なくなっている状態の総称であり、下記のような様々な病態の総称になります。
- 円形脱毛症
- 男性型脱毛症・女性型脱毛症
- かびや梅毒などの感染症による脱毛
- 膠原病や甲状腺疾患による脱毛
- 出産後・外科的手術後・高熱・出血・貧血・急激なダイエットによる休止期 脱毛
- 抗がん剤などの治療薬による薬剤性脱毛
- 瘢痕性脱毛
- 先天性脱毛症
- トリコチロマニア
これらの脱毛症のなかで、原因がはっきりしているものも多いです。
血液検査などにより原因となる病気がわかった場合は、その病気を治療することで脱毛症がおちつきます。
一方で、難治なものもあります。
いずれにしても、どの脱毛症であるか皮膚科に診断してもらうことが大切です。
- 円形脱毛症はどんな脱毛症ですか?原因は何ですか?
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円形の脱毛が1個~多数あらわれて、ときに頭全体の毛が抜けてしまい、全身の毛までも抜けてしまう場合があります。
毛の部分にリンパ球が多数やってきて、毛を攻撃するために脱毛が生じます。
なぜリンパ球が自分の毛を攻撃するのか、その原因ははっきりしていませんが、
現在のところ毛の大元の部分への自己免疫病として考えられています。
そのため、自己免疫疾患の一部である甲状腺疾患・尋常性白斑・
全身性エリテマトーデス・関節リウマチ・重症筋無力症が合併しやすいです。
また、約半数にはアトピー性皮膚炎の合併もみられます。
- 円形脱毛症にストレスは関係しますか?
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疲労や感染症などの肉体的・精神的ストレスを引き金にして、
脱毛を引き起こす自己免疫反応が誘発されたと想定される場合もありますが、
明らかなストレス誘因なく発症していることの方が多いです。
円形脱毛症の頻度は人口の1~2%で、男女差はなく、すべての年齢層に発症して、
日本でもアメリカでも社会情勢がかわっても変化がありません。
また、家族内発症があり、患者との親等が近いほど発症率が上がります。
そのため、明らかな原因遺伝子ははっきりしないものの、多因子が関与する遺伝性疾患と考えられています。
以上のことから、ストレスは脱毛の誘因となっている可能性はありますが、
原因そのものではなく、関連性についての科学的根拠は乏しいのが現状です。
- 円形脱毛症の治療は?
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治療は、毛の部分を攻撃しているリンパ球を抑制させることです。発症時期や脱毛の範囲などにより下記のような治療を選択します。
① 『脱毛が始まったばかりで、脱毛の範囲が小さい場合』
ステロイド外用薬や塩化カルプロニイウム液を塗り、抗アレルギー薬を内服して治療します。
② 『脱毛がはじまったばかりで、脱毛の範囲が大きい場合』
ステロイド薬と抗アレルギー薬の内服、ステロイド外用薬を塗ることで治療します。
ステロイド薬の内服治療を開始した場合は、通常2-3ヵ月かけて徐々に量を減らしていき中止しますが、
もともと糖尿病や感染症などの合併症があると使用できないこともあります。
また、入院治療によるステロイド薬の点滴パルス治療が適応となる場合もあります。
③ 『脱毛が始まって6か月以上経過していて、症状が固定化している場合』
局所免疫療法かステロイド薬の局所注射により治療します。
局所免疫療法は、かぶれを起こす特殊な薬品を脱毛部に2週間に1回塗って、
弱いかぶれを繰り返しおこさせる治療法です。
有効率は60%以上で、難治な症例や小児でも治療可能ですが、中止すると再び脱毛する場合が多いです。
副作用としてひどいかぶれが起きる場合があるので、皮膚科で治療するのがよいです。
ステロイドの局所注射も有効率は高いですが、頭皮に直接注射するため痛みを伴います。
- 円形脱毛症は治りますか?
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脱毛の範囲が少ない場合は、ほとんどが自然に治ります。
しかし、頭部全体や体中の毛が抜けてしまった場合は、治療に数年以上かかることもあります。
円形脱毛症の場合は、毛の大元の細胞が死んでしまっているわけではないので、治療がうまくいけば再び毛が生えてきます。
- 男性型脱毛症はどんな脱毛症ですか?治療にはどんなものがありますか?
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思春期以降の男性の額の生え際・頭頂部の毛の太さが細くなり、
本数も少なくなってきて、最終的には毛がみられなくなる脱毛症です。
男性ホルモン(アンドロゲン)が影響して、毛の成長期が短くなるために軟毛化していきます。
また遺伝的な要素もあり、家族に髪のうすい人がいる場合が多いです。
治療には、フェナステリド(プロペシア)内服治療とミノキシジルを含有した外用剤(リアップ)が効果的です。
内服治療は自費診療となり、当院では1か月8,700円(初診料・再診料別)となります。
- フェナステリド(プロペシア)の効果は?
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フェナステリド(プロペシア)は1日1回の内服になります。
1年後の脱毛の有効性は、改善58%・進行なし40%・進行している2%、
3年後の有効性は改善78%・進行なし20%・進行している2%となります。
改善がみられる場合は、内服開始後3ヵ月頃からうぶ毛が目立つようになり、
6か月頃からはうぶ毛が太く伸びてきて薄毛が目立たなくなり、
1年後には明らかな抜け毛の減少とボリュームアップを感じるようになります。
4年目以降は、内服を継続していれば改善された毛髪が維持されれることが多いですが、
内服を中止すると元々の脱毛が再び進行します。
- 女性型脱毛症はどんな脱毛症ですか?治療にはどんなものがありますか?
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女性の男性型脱毛症で、更年期以降に徐々に頭頂部を中心として毛が薄くなっていきます。
治療は、ミノキシジル(リアップ)外用薬や塩化カルプロニウム外用薬などの塗り薬になります。
男性の場合に使用するフェナステリド(プロペシア)は、女性には効果がありません。
- 少なくなったまつ毛は増やすことはできますか?
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ビマトプロスト(グラッシュビスタ)という液状の薬を専用のハケを使って上まつ毛に1日1回塗る治療法があります。
使用開始後4か月で上まつ毛の長さ・太さ・濃さに効果を実感する割合が77.3%になります。
自費診療となるため、70日分で18,700円(初診料別)となります。
- 子供の脱毛症にはどんな病気があるの?
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小児の脱毛症には、円形脱毛症・トリコチロマニア・脂腺母斑による脱毛・先天性脱毛症などがあります。
小児の円形脱毛症の原因は、大人と変わりないですが、
治療方法が異なり、ステロイドの内服治療と注射・光線療法を原則としておこないません。
そのため、局所免疫療法や抗アレルギー薬の内服・ステロイド外用薬・塩化カルプロニウム外用薬などにより治療します。
トリコチロマニアは、学童期に多く、心理的問題や性格、
家庭環境などが影響して自らの手で髪を引き抜いて脱毛斑をつくってしまう病気です。
円形脱毛症と見分けるために、まずは皮膚科を受診して下さい。
頭にできた脂腺母斑は、生下時からある1~10cm程度の黄色調で皮膚表面がわずかに隆起した脱毛斑です。
中年期頃になると脂腺母斑の部分に悪性腫瘍ができる場合があるため、外科的切除を行うことが多いです。
先天性脱毛症は、生まれた時に毛があってもその後徐々に脱毛してしまいます。
今のところ有効な治療法がないのが現状です。
どの脱毛症であるか診断するために、早めに皮膚科にご相談下さい。