小児期の皮膚疾患

小児期の皮膚疾患について

小児の皮膚は発達段階にあり、免疫も未発達な状態にあるため、大人の皮膚疾患を
そのままあてはめることができない場合が多いです。
また、皮膚だけでなく内臓の合併症にも注意をはらうことが大切です。

 伝染性の小児期皮膚疾患について

伝染性軟属腫(みずいぼ) / 伝染性膿痂疹(とびひ) / 尋常性疣贅 / 手足口病 / 伝染性紅斑(リンゴ病) / 水痘(みずぼうそう)
麻疹(はしか) / 風疹(三日はしか) / 突発性発疹 / しょう紅熱 / ぶどう球菌性熱傷様皮膚症候群 / Gianotti-Crosti症候群 など

 その他の小児皮膚疾患について

アトピー性皮膚炎 / 接触性皮膚炎 / じんま疹 / アナフィラクトイド紫斑 / 薬疹 / 川崎病 など

 伝染性軟属腫(水いぼ)

伝染性軟属腫ウイルスの感染により2~10mm程度のドーム状のぶつぶつができます。
詳しい内容は、いぼのQ&Aを参照してください。当院では麻酔のテープを使って、ピンセットで摘除します。

 伝染性膿痂疹(とびひ)

水疱とそれが破れている状態が混在している水疱性膿痂疹と黄褐色のかさぶたと膿が混在している痂皮性膿痂疹の2つがあります。
水疱性膿痂疹は黄色ブドウ球菌による毒素が原因となり、痂皮性膿痂疹はレンサ球菌が原因となります。
かゆみのためにひっかいて、自らの手で他の部位に感染巣をとび火させて皮疹が拡大します。
治療は抗菌薬の飲み薬になりますが、ときに腎臓に炎症をおこすことがあるため尿検査も必要になります。

 尋常性疣贅

ヒト乳頭腫ウイルスの感染により、手足に好発する数ミリ~数センチ大のいぼです。
詳しい内容は、いぼのQ&Aを参照してください。
自然治癒することもありますが、いぼが増大・多発することがあるため、液体窒素療法などにより治療するのが一般的です。

 手足口病

コクサッキーウイルスやエンテロウイルスの感染により、手足口に発疹ができます。
手のひらや足のうら、膝やおしりに辺縁が赤くなった小さな水疱が散在し、頬の内側や舌にも発疹ができます。
かゆみはほとんどありません。発疹は、通常1週間程度で自然治癒するので特別な治療は必要ありません。
しかし、まれに髄膜炎を併発することがあるため、高熱や頭痛・嘔吐があった場合は注意が必要です。
症状が軽快した後2~4週間は、ウイルスが腸の中で増殖して便や唾液のなかに排泄され続けるため、
家庭内や施設内で流行します。

 伝染性紅斑(りんご病)

ヒトパルボウイルスの感染症です。突然、両ほほが赤くなり数日後には消退するものの、
その後両腕から両足へと赤い発疹が出現して拡大していきます。発疹がでる前に、風邪症状がある場合もあります。
1週間程度ですべて自然消退するため、重症の場合以外は特別な治療は必要ありません。妊婦が感染すると、
胎児が死亡することがあるので注意が必要です。

 水痘(みずぼうそう)

水痘帯状疱疹ウイルスの初感染により、発熱と同時に頭をふくむ全身に赤みをともなった小さい水疱や赤い発疹が多発します。
合併症として二次的な細菌感染や脳炎・肺炎・難聴などがあります。治療は、重症化をおさえるために抗ウイルス薬を飲みます。
学校は、すべての皮疹がかさぶたになるまで出席停止となります。

 麻疹(はしか)

麻疹ウイルスによる感染症です。38℃以上の発熱と風邪症状のあと一旦解熱し、その後に再び発熱すると、
それとともに耳の後ろ・頬から全身に点状~網目状の赤い発疹があらわれ拡大します。発疹は、解熱とともに色素沈着を残して治癒します。
治療は対症療法となりますが、合併症として肺炎・中耳炎・脳炎があるため注意して経過観察することが大切です。
学校は、解熱後3日経過するまでは出席停止となります。

 風疹(三日はしか)

風疹ウイルスによる感染症です。発熱と同時に顔から全身に赤い発疹が拡大し、色素沈着を残さずに治癒します。
全身のリンパ節が腫れることが多いです。
治療は対症療法になりますが、合併症として脳炎・髄膜炎・血小板減少性紫斑病があるため注意して経過観察することが大切です。
学校は、発疹が消退するまでは出席停止となります。

 突発性発疹

ヒトヘルペスウイルス6型・7型による感染症です。
高熱で発症して、解熱とほぼ同時に、顔・体に淡く赤い発疹があらわれ色素沈着を残さず数日で消退します。
発熱時に熱性けいれんを伴う場合があります。治療は対症療法になります。
安易に市販薬のアスピリンを使用するとReye症候群という病気を引き起こすことがあるため注意が必要です。

 しょう紅熱

レンサ球菌の毒素によって生じる疾患です。発熱と喉の痛みの後に、舌が赤くなり、ほおの内側に赤い斑点がみられ、
首から全身へと毛穴に一致した赤い発疹が拡大していきます。顔は、鼻と口まわりを除いて全体的に赤くなり、リンパ節は腫れます。
通常3~4日程度で熱が下がり、皮疹も痕を残さず治癒します。咽頭をこする検査で診断でき、治療は抗菌薬の飲み薬になります。
ときに腎臓に炎症をおこす場合があるため、尿検査も必要になります。

 ぶどう球菌性熱傷様皮膚症候群

黄色ブドウ球菌がつくる毒素による疾患です。発熱・食欲不振などの全身症状とともに、
顔から全身に赤い発疹・水疱・水疱が破れて黄褐色のかさぶた状になったものが混在しながら拡大します。
入院加療による抗生剤の点滴加療が必要になります。

 Gianotti-Crosti症候群

B型肝炎ウイルス・EBウイルス・サイトメガロウイルス・ロタウイルス・コクサッキーウイルス・RSウイルスなどに
初めて感染した小児におこるアレルギー性の発疹です。
両足からおしりにかけて数ミリ大の赤い点状の発疹が多発拡大して、数日かけて上半身や顔まで拡大します。
通常自然軽快するため経過観察でよいです。

 アトピー性皮膚炎

小児のアトピー性皮膚炎は、肘窩・膝うら・首まわりに特に強くあらわれることが多いです。
症状がひどくなるとひっかくことで皮疹が悪化し、
水いぼやとびひなどの感染症を併発しやすくなります。
詳細については、アトピー性皮膚炎のQ&Aをご参照ください。

 接触性皮膚炎(かぶれ)

何かしらの原因物質に触れることで生じる湿疹ですが、小児ではマンゴー・ボタンのニッケル・ゴーグルのゴムなどでかぶれることが多いです。

じんま疹

じんま疹は、通常数時間~24時間以内に消えてなくなる痒みをともなう赤い発疹です。
原因は、食べたもの・薬・触れたもの・汗・ストレス・物理的な刺激(温熱・こすれ・圧迫・寒冷・日光・水)など多岐にわたります。
重症の場合は、呼吸困難をともなうアナフィラキシーショックへと移行する場合もあります。

小児に特に注意すべき特殊なじんま疹の一つに食物依存性運動誘発性アナフィラキシーがあります。
小麦などを食べた後、4時間以内に運動をするとじんま疹や呼吸困難を生じるもので、昼休み中におこる場合が多いです。
エビ・カニ・イカ・カキ・セロリなども原因となることがあり、原因食物を食べただけでは発作はおこりません。

診断方法の1つに血液よるアレルギー検査がありますが、
検査項目は限られたもののみになり、100%陽性となる検査ではありません。
通常の皮膚症状のみがあらわれるじんま疹の治療は、抗ヒスタミン薬の内服になります。
アナフィラキシー症状がある場合は救命救急での処置が必要となり、その後はアドレナリン自己注射薬を携帯する必要があります。

 アナフィラクトイド紫斑

小児では頭痛・喉の痛みなどの風邪症状の後に、足に数ミリ大の小さな赤紫色の発疹が多発し、関節痛や腹痛・下血をともなうこともあります。
細菌感染によるアレルギー反応で発症することが多く、治療の基本は安静になり、状態によりステロイド外用薬などを併用します。
多くは数週間のうちに軽快しますが、時に腎機能障害を併発する場合があるので尿検査をすることも大切です。

 薬疹

薬の成分やその代謝物によりできる発疹の総称を薬疹といい、じんま疹の形態をとるものや赤い点状の発疹が全身に広がるものなど様々です。
その1つに小児薬疹の約1/3を占める固定薬疹があります。解熱鎮痛薬であるアセトアミノフェン・メフェナム酸などを摂取した後、数分~数時間で口まわりや陰部・手足に数cm大の赤色~暗紫色の円形発疹ができます。
治療は、原因薬剤の中止と、ステロイド外用薬になります。

 川崎病

39℃前後の発熱から始まり、発病初期から手足の末端に赤い発疹を生じて、3~5日すると手足の指が腫れ、全身に赤い発疹も多発します。
2~3日目にはくちびるや舌が赤くなり、目が赤く充血します。本症の重大な合併症に心疾患があるため、小児科での精査・加療が必要です。