アトピー性皮膚炎について

アトピー性皮膚炎は、遺伝子的変異などによる皮膚のバリア機能の低下、
アレルギー反応をおこしやすい素因を背景として、
さまざまな悪化因子が加わり慢性に皮膚炎を繰り返す病気です。

当院では、薬の処方だけでなく適切な薬の塗り方や日頃のスキンケアの仕方、
悪化因子とのむき合い方、再発予防の方法について、丁寧な説明を心がけています。
どうぞお気軽にご相談下さい。

アトピー性皮膚炎のQ&A

アトピー性皮膚炎とはどんな病気ですか?

かゆみを伴う湿疹が、乳児で2か月以上、
その他では6か月以上良くなったり悪くなったりを繰り返して慢性的に続く疾患です。
また、その多くがアトピー素因(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、
アトピー性皮膚炎の家族歴・既往歴またはIgE抗体を産生しやすい素因)を持っています。

皮疹は、乳幼児期・小児期・思春期・成人期に大きく分けられ、それぞれに特徴的な症状をつくります。
慢性的な病気ですが、適切な治療をすることで、
症状がないもしくはあっても軽い症状で日常生活に支障をきたさない程度の状態が続くようになります。

治療の目標は?

治療目標は、以下の2つになります。
①アトピー性皮膚炎の症状がない、もしくはあっても軽い症状で日常生活に支障をきたさず、
 薬物治療もほとんど必要としない状態を維持すること。
②軽い症状がつづいていても、急に悪化することはまれですぐに症状が落ち着くように維持すること。

アトピー性皮膚炎に対する薬物治療とは?

アトピー性皮膚炎は、遺伝的素因に加えて様々な内的・外的要因が影響する皮膚病であるため、
現時点では病気そのものを根本的に治す治療はありません。
対症療法になりますが、上記の「Q 治療の目標は?」で記載したような
治療目標に準ずることのできる薬物療法が治療の基本となります。

当院では、日本皮膚科学会の推奨する標準的な治療を基本にして、
患者さんにわかりやすい説明を心がけながら診療しております。どうぞお気軽にご相談下さい。

塗り薬にはどんなものがありますか?

①ステロイド外用薬
アトピー性皮膚炎を充分に鎮静することができる有効性・安全性が科学的に立証されている薬剤で、
その強さは5段階に分かれています。
漫然と不適切な強さのステロイド外用薬を使用していると下記のような副作用を皮膚に引き起こすため、
定期的な診察により皮疹の状態にあった適切なステロイド外用薬を使用することが大切です。
ステロイド外用薬をこわがって使用せずにいると、皮膚に強い炎症を与え続けることになり、
しいては皮疹部分が硬く茶色になり、かゆみに伴う不眠やストレスを引き起こし、
皮膚感染症のリスクを上げることなどにつながります。

≪ステロイド外用薬の局所の副作用≫
・ステロイドにきび ・ステロイド潮紅 ・皮膚萎縮 ・多毛 ・細菌・真菌・ウイルスによる皮膚感染症
・アレルギー性接触性皮膚炎 ・毛細血管拡張

②非ステロイド系消炎外用薬
皮膚の炎症を抑える力は極めて弱く、かぶれを生じることも多いため、使われる場面は少ないです。

③タクロリムス軟膏
アトピー性皮膚炎を充分に鎮静することができる有効性・安全性が科学的に立証されている薬剤です。
その強さは、ステロイド外用薬の5段階強さの中で上から3番目のものと同等になります。
ステロイド外用薬とは異なる作用機序で皮膚の炎症を抑えるため、
ステロイド外用薬の副作用である皮膚萎縮や毛細血管拡張がありません。
皮疹の重症度に応じて使用することでステロイド外用薬の使用量を減量することが可能になります。
また、アトピー性皮膚炎の強い炎症が落ち着いた後も週2~3回塗り続けることで、
皮疹が再び悪化することを抑える効果があります。
小児用(2~15歳)と成人用(16歳以上)の軟膏がありますが、妊婦・授乳中の方は使用できません。

ステロイド外用薬の使い方はどのようにすればよいですか?

1日2回患部に薄く塗ります。
病院で処方された適切な強さのステロイド外用薬を適切な使用量を守って塗ることが大切です。
皮膚の炎症が治まっても、急に中止するとすぐに症状が悪化することがあります。
定期的に診察をうけながら、徐々に弱いランクのステロイド外用薬に切り替えて、塗る回数を減らしていくのがよいです。

子どものステロイド外用薬はどのように使えばよいですか?

原則として子どもには、ステロイド外用薬の強さを大人より1ランク下げたものを使用します。
塗り方は、大人と変わりません。

ステロイド外用薬は怖くないですか?

ステロイド外用薬を適切に使用していれば、ステロイド内服薬のような全身的な副作用がおこることはまずありません。
またステロイド外用薬を急に中止したことによる本来の皮膚炎の悪化を、ステロイドの副作用として間違えていることが多いです。

ステロイド外用薬をきちんと塗れていないと皮膚の炎症をしっかり抑えることができず、
ステロイドの使用量・使用期間が増すことになります。
定期的な診察を心がけて、医師とよく相談しながら治療を継続してください。

かゆみ止めの飲み薬は服用した方がよいですか?

皮膚に強い炎症があると、かゆみが強くなり日常生活に不快感や苦痛を生じるようになります。
かゆみから夜間に不眠となり、かきむしることで皮疹が悪化していきます。
抗アレルギー薬は、 皮膚の炎症そのものを抑制する効果はありませんが、かゆみによる皮疹の悪化や不快感を減らすため、症状に応じて併用するのがよいです。

アトピー性皮膚炎の悪化因子は?

乳児では、食物アレルゲンが関与することがあります。
乳児期以降では、環境アレルゲン(ダニ・ハウスダストなど)や接触物質、ストレスなどが悪化因子となります。
アレルゲンの検査には、血液検査や皮膚テストがあります。

皮疹とストレスは関係ありますか?

アトピー性皮膚炎は、ストレスから皮疹をひっかいて症状が悪化することがよくあります。成人では、人間関係・多忙・進路葛藤・自立不安などの社会的ストレスが影響して皮膚をひっかく癖がついている場合があります。

小児でも、様々な心的葛藤や不満から皮膚をひっかく癖がみられる場合があります。
患者さん本人が気づいていないことが多いため、
そのような状態にあることに気がつくだけでも症状が好転する場合があります。

スキンケアはどうしたらいいですか?

アトピー性皮膚炎では、皮膚の乾燥とバリアー機能の低下が元々あるため、
皮疹のあるなしに関わらずステロイドを含まない保湿剤でスキンケアを継続的におこなうことが大切です。
刺激の少ない石鹸を使って汗や汚れを洗い流し、
シャワー・入浴後には使用感のよい好みの保湿剤を選んで1日2回全身に塗ってください。

日常生活で気を付けることはありますか?

①入浴・シャワーにより皮膚を清潔に保ってください。
②室内を清潔に保ち、適温適湿の環境を心がけて下さい。
③なるべく規則正しい生活を心がけて、暴飲暴食は避けるようにしてください。
④肌への刺激の少ない服を着るようにしてください。
⑤爪は短く切って、かくことで皮疹が悪化するのを防いでください。